Old Spring

なつかしさをさがす

白夜

真夜中の猫の叫び声がこわい。だんだん明けてくる東の空がこわい。音もなく沈黙する自分の部屋がこわい。ときどき聞こえてくる両親の咳や物音がこわい。あかるいうちに洗濯したい洋服で溢れかえっているのに、昼間の時間にわたしは存在しない。かといって夜と仲がよいわけではない。ほんとうはどこにもいないのかもしれない。姿のみえない猫と変わらない。何度いいきかせても時計は狂うから、わたしたちはきのう、ついに別れた。